備忘録
2019.08.18
偽痛風の漢方自験例/86歳母
夏の日曜日の朝、2階で寝ていた母親が足が痛くて下へ降りられないとSOSを送ってきた。見ると左足首が骨折したかのように腫れ上がっている。痛くて足を地面に付けられないという。「骨折や捻挫するようなことは何もなかった。朝起きたらこんななってたんや」と。
救急車を要請して地域の基幹病院へ。血液検査、単純X線写真、関節穿刺により診断の結果は「偽痛風」、鎮痛消炎剤を処方された。車いすと松葉杖を借りて帰宅。
帰宅後、「鎮痛薬は胃が悪なるし飲みたくない。家にある漢方薬でなんとかできひんのか?」と要望する。頭に浮かんだのは、妻が体調管理のために続服している漢方処方、「防風通聖散+竜胆瀉肝湯+通導散+腸癰湯」という少量合方処方がある。『山本巌の臨床漢方』p.63-65、中島随象先生の導Ⅱ号・竜Ⅱ号を参考に、我が家のかかりつけ医師であるY先生と相談して処方してもらっているものである。
偽痛風の母親に服用させてもいいかどうか電話して相談してみたところ、「いいと思いますよ」ということだったので、早速服用させることにした。この処方で短期的に下した方が早く治るだろうと考えたからである。
「私は毎日お通じがあるさかい、下してもらわんでもいいけど、早く治るんやったら飲むわ」といって昼食後、母親は服用し、そのまま昼寝とあいなった。その後用事があって私は外出、夕方に帰宅したところ、「ものすごい宿便が出たわ」と。しかも足首の腫れが明らかにしぼんできている。就寝までにその後2回排便があり、就寝前にも服用。
翌朝、母は昨日の出来事が無かったかの如く2階から普通に歩いて降りてきた。昼間に家の前を掃除している母の姿を見かけた近所の住人は、昨日担架で救急搬送される母の足首の腫れをみて骨折と思い込んでいただけに驚きを隠せない様子だった。
まさに中島流一貫堂漢方の治療の大綱「病は邪によって起きる。邪は瀉さねばならない。したがって病の治療は瀉法である」でした。