備忘録
2026.08.08
変形性膝関節症に伴う右膝関節炎症性浮腫と疼痛/92歳母
7月末近くになって92歳になる母が右膝が痛いと言い出す。それでも月・水・金とデイサービスに通い、運動・リハビリをこなしていた。
土曜朝、右膝がかなり痛いと言いながらもデイサービスの送迎車に乗っていく。しばらくしてデイサービスから電話連絡が入り、右膝が腫れていて痛いとのことで入浴と運動は止めていただきましたとのこと。
夕方に帰宅。送迎車から降りるのも大変困難な状態だった。
右膝を確認するとかなり熱感があり発赤してパンパンに腫れ左膝の1.3~1.4倍位に太くなっている。
歩行困難で介添えがないとトイレにも行けない。
これまでにも膝が痛いと言って漢方薬で緩解させたことはあったが、こんなに重症化したのは初めてだった。
体温は36.4℃で平熱だし感染によるものではないだろう。
変形性膝関節症に伴う炎症性浮腫・疼痛。歩き始めに劇痛がはしり歩けない。
これが契機となり寝たきりにならないように必ず何とかする。
早速、家に常備している漢方エキス剤で処方を考えてみた。もちろん参考にしたのは山本巌先生の関連書籍で中でも『山本巌の臨床漢方』と『増補改訂新版 漢方治療44の鉄則』。
特に合方時の用量が記載されている坂東先生の『増補改訂新版 漢方治療44の鉄則』は有力な根拠となった。
重度の炎症性浮腫に対して消炎利水の麻黄+石膏と防已、利水の黄耆・朮を考慮するとエキス剤としては越婢加朮湯+防已黄耆湯が定番だが、防已黄耆湯が家にないので、かかりつけ医のY先生に事情を話して処方してもらう。
しかし今回は発赤・熱感が強く、骨膜・骨組織の障害による急性炎症も重視すべきと考えた。言ってみれば膝関節の捻挫のようなものか。
まさに急性瘀血と考えるべきか。消炎性駆瘀血剤の通導散に桃仁・牡丹皮・薏苡仁・冬瓜子で構成される腸癰湯を足すと病態に合致するし、これらは常備薬にある。
【処方】
防已黄耆湯7.5g+越婢加朮湯7.5+通導散4.0g+腸癰湯4.0g
お湯に溶いて1日分とし、分3食後服用とした。
8月1日(土)夕食後に1回服用。通常は2階部屋で就寝するが、1階で就寝。
トイレのことがあるので母の近くで就寝することにした。
8月2日(日)朝、食欲は良好。排尿回数は増えている。通常排便。
特に状態に大きな変化はないが見た目は発赤・腫脹やや改善しているようにも見える。
しかし歩行困難状態に変化なし。
昼食後1回服用。
夕食後1回服用。膝の腫脹・熱感は明らかに改善してきている。
そのまま1階で就寝。
8月3日(月)早朝、気がつくと近くで寝ていた母の姿が無い。
もしやトイレかどこかで倒れていないかと慌てて探すも1階には居ない。
まさかとは思いつつ2階の母の部屋を見にいくと、何と鼾をかいてベッドで寝ているではないか。
階段を上れるようになったのか……。
膝の状態はやや熱感はあるもののほぼ正常化してきているし、一人歩行もできるようになっている。
しかし本日のデイサービスは休みとした。
朝食後・昼食後・夕食後同方続服。
8月4日(火)食欲・二便正常。右膝に熱感も浮腫もなく、ほぼ元通りの生活をこなせるように回復している。
母も劇痛と不安から解放され表情も明るい。
念のため越婢加朮湯を減量し、通導散を外して、防已黄耆湯7.5g+越婢加朮湯5.0g+腸癰湯4.0gとし、分3服用とした。
8月5日(水)通常通りデイサービスに通いリハビリをこなしてきたが、全く問題なし。
病態を冷静に認識し、それに応じた生薬の薬能を考えてエキス製剤を選択し合方処方すれば、こんなにも劇的に効く。
92歳高齢者にとって胃腸障害や腎機能低下のリスクがある消炎鎮痛剤などより漢方の方が遙かに有効で合理的だ。
この局面でまたまた本物の漢方の凄みを実感することが出来た。



