備忘録
2024.11.08
頸椎症(性神経根症?)の漢方自験例
10月某日朝、起床後異常に右頸部から肩に痛みを伴う強張りを自覚、首の後傾が重だるい激痛で困難、首の後傾と右手の角度によって右肩から右手指、特に親指・示指にかけて顕著なしびれを自覚する。
車の運転中も右を向くと右手が激しくしびれる。PC操作中も右手の角度によってしびれてマウス操作がしづらくなる。頸椎症性神経根症のような症状である。
日課の陸上競技(短距離、跳躍系)トレーニングに伴うストレッチでほぐしていたが、3週経っても症状の改善がまったく見られない。
そこで日常の保健薬としている一貫堂竜胆瀉肝湯、補中益気湯(or清心蓮子飲)、芎帰調血飲、通導散をひとまず休薬し、この頸椎症状に対して漢方治療を試みることにした。
年齢的に頸椎の退行性変化はあると思われるが、加えて1日の寒暖差が大きくなり夜間に冷えたこと、決して痰湿体質ではない(むしろ解毒証体質、陰虚体質の傾向が強い)が重だるい激痛であること、頸肩部が膀胱経の走行に関連することから局所的に痰湿が影響していると判断。いわゆる痺症で着痺の傾向が顕著かなと。
葛根加朮附湯は解毒証体質なので附子はあまり使いたくないし、麻黄は体質的に合わない。
例によって『山本巌の臨床漢方』『症例&144処方臨床解説』を参考にしながら、痰湿を除く二陳湯ベースに白朮・蒼朮の利水薬が加わり、去風湿薬で鎮痛作用が強く上半身により強く作用する羌活と威霊仙、これらが含まれている処方。
構成生薬の薬能を考えて二朮湯エキス剤を試すことにした。
二朮湯を試すのは初めてだが、病態に合わせて生薬の薬能から考えるという、山本巌流漢方的思考だと処方選択にも確かに納得がいく。
早速、かかりつけ医に二朮湯エキスを処方してもらうことにした。
二朮湯エキス15g/日、分3 14日分
昼5g、夜5g服用。就寝前の歯磨きのウガイで首を後傾した時、気のせいか痛みがやや軽減しているように感じた。
翌朝、最も症状がキツイ起床後のウガイに伴う首の後傾では症状が10→1と嘘のように顕著に改善。これには正直驚いた。
頸部と右手の体勢により右上肢から親指・示指のしびれを少し感じることがあるものの1日にしてほぼ苦痛を感じることはなくなった。
念のため2週続服して症状は完全に消失し、廃薬とした。
二陳湯ベースに白朮、蒼朮が含まれていることから二朮湯はブヨブヨ体型の水毒体質傾向の人の肩関節痛というイメージが一般的には成書に述べられていることが多いが、私の場合は細マッチョのアスリート体型である。
決して体型や見た目に拘らない方が良いのかもしれない。部分的にでも痰湿の偏在があれば適応になるのだろう。
事実、私に二朮湯は劇的に著効した。
